シンガポールの公用語は、英語、中国語、マレー語、タミル語の4つあります。
その中でも英語の変化球、「シングリッシュ」には興味深いものがあります。
シンガポールに初めて来て、「シングリッシュ」を聞いたときは、少々びっくりするかもしれません。
なぜかって、あまりにも独特すぎて聞き取れないからです。
特に、アメリカ英語やイギリス英語など、ニュースで読まれている英語に慣れている人は、よくわからないと言います。
シングリッシュには、どんな特徴があるのか見ていきましょう。
文法
文法は、あってないものという感じです。
現在形も過去形も、現在完了も別にちゃんとしていなくても通じるのです。
主語・述語・目的語・・・としなくても大丈夫です。
例えば、「I ’ve already bought it.(私はすでにそれを買いました)」は、「I buy already」で通じます。
現在形に過去を表す単語を組み合わせるのです。
「Yesterday(昨日)」「Last night(昨夜)」なんかも使えますね。
あんなに、動詞の活用を覚えたのに・・・という人は、もちろんちゃんと時制を合わせて話してもいいのです。
でも、時制の文法はちょっと苦手という人には朗報ですよね。
発音
発音にも独特のものがあります。
簡単にいうと、後ろの方にアクセントがあるのです。
例えば、「Picture(ピクチャー)」は、英語辞典のアクセント記号は「ピ」にあります。
でも、シングリッシュでは、「チャー」の部分にアクセントがくるのです。
「Picture(ピクチャー)」や「Chicken(チ・キン)」、「Flower(フラ・ワー)」など、音節が2つある単語は、特にこの傾向があります。
2音節以上ある単語でも、やはりアクセントは最後にくるのが通常の発音です。
「Customer(カス・タ・マー)」「Challenger(チャ・レン・ジャー)」などです。
そのせいか、聞いたときに全体的な文章の印象として、アップダウンが多く、中国語のように聞こえてしまうという意見があります。
これが、1節の単語になると更にハードです。
例えば、「Park(パーク)」「Work(ウォーク)」などは、それぞれ「パッ」「ワッ」と発音され、その1節で何かを判断する必要があるのです。
よく耳にするのが、「Car Park(カーパーク)」ですが、これは「カッパー」と発音され、特にラジオ英語講座などを一生懸命に勉強した人には難関です。
でも、反対にこのアクセントの特徴を覚えておくと、シングリッシュがうまくなり、聞き取りもよくできるようになるのです。
速さ
シンガポールの人は、全体的に早口の人が多い印象です。
上記の特徴を持った英語がダダダーッと話されます。
頭で理解するのが、ワンセンテンス遅くなり、次に更にもうワンセンテンス遅くなり、よくわからなくなってしまうことがあります。
でも、大丈夫です。
「もっとゆっくりとはっきり話して」というと、わかりやすく話してくれます。
語尾
シングリッシュの語尾は、またまた多彩です。
バリエーションに富んだ語尾をご紹介しましょう。
よく使われている語尾は、「lah(ラー)」です。
使い方は、「OK, lah(オッケー・ラー:いいよー)」「No need lah(ノー・ニー・ラー:いいってー)」という感じです。
ちょっと短い文章で、「ラー」をつけることによって、リズムよく強調の意味をも表す語尾です。
他にも「mah(マー)」や「leh(レー)」などがありますが、それぞれにちょっとしたニュアンスの違いがあります。
簡潔な表現
シングリッシュには、簡潔な表現があります。
例えば、チキンライスを買いに行って、もう売り切れだった場合、「チキンライスはもう全部売り切れです。明日ならあります」ということを表現するならば、「Today, chicken rice all finish already. Tomorrow can.」と言われることがあります。
本来なら「We sold out our chicken rice …..」となるのでしょうが、ホーカーセンターのおっちゃん方は、なんと簡潔な言葉で「売り切れと明日ならある」ということを伝えるのでしょう。
日本語の並びと同じような言い方で、頭にも入ってきやすいのです。
おそらくおっちゃん方は、学校で英語を習ったのではないかもしれません。
見聞きした英語を最小限身につけて、言いたいことを表すというスゴ技を使います。
英語は、コミュニケーションの手段以上のものではないことがよくわかりますね。
単語を並べて話すだけでも、相手に伝えたいかどうかが大事です。
注意
少しシングリッシュを理解できたのではないでしょうか。
地元のシンガポール人に根ざしたシングリッシュですが、シンガポール政府は、シングリッシュを推奨しているわけではありません。
学校では、シングリッシュ禁止ということもあります。
TPOに合わせて、使い分けられるといいですね。
実際に、病院やお店でも同僚とはシングリッシュ、お客さんや患者さんにはイギリス英語を話している場面もよく見かけます。
「ラー」を連発していた人が、キャスター顔負けの英語で話したときにはびっくりします。
英語苦手派にはとっつきやすい
このように、シングリッシュは、英語が苦手な人には、気持ちを軽くする効果があります。
英語で話すことに対する恐怖心や、ちゃんと話さなきゃという気持ちが和らぎ、とにかく伝えたいことを話してみるという、ちょっと高めのハードルを超えられるかもしれません。
英語が得意な人は、いちいち文法が違う、時制が合ってないなど、チェックしてしまうでしょうが、そこはご愛嬌ということで、「英語に寛容なんだ」「なんか面白い」と感じてもらうとストレスがないと思います。
日本にも方言や言い回しや和製英語など、日本独特の言葉がありますね。
そんなふうに捉えるといいかもしれません。
まとめ
英語の枠からちょっとはみ出たシングリッシュ、聞いてみたくなりませんか?
シンガポールにいらっしゃった際には、ホーカーセンターやウェットマーケットなどに行ってみると、おもしろいと思いますよ。